更年期うつに対する鍼灸治療の症例

更年期うつに対する鍼灸治療の症例

更年期症状に悩む女性

当院での更年期うつに対する鍼灸治療の症例をご紹介いたします。

 

【50歳女性】更年期うつ発症から鍼灸治療を始めるまでの経緯

2021年5月来院。

数年前から更年期障害のような症状と激しい生理痛があったため婦人科を受診し血液検査をすると、FSHが異常に高く更年期障害と子宮腺筋症、チョコレート嚢腫と診断される。

子宮腺筋症による生理痛は「ミレーナ」という器具を使用し、生理を止めることで対処することになった。

今年の3月下旬頃から一気に気分の落ち込みが酷くなり、また生理痛のような下腹部痛と不正出血が起きる。

思い当たる原因としては現在、実母と同居している状態だが、母親のわがままが酷いことが一番のストレスになっている。

婦人科を受診しホルモン剤(ノアルテン)を服用するがあまり効果がなく、抗うつ剤を勧められるが抗うつ剤はどうしても飲みたくないという気持ちがあり、友人に鍼治療を勧められる。

 

自覚症状や生活習慣など

気分の落ち込み、眠気、汗をかきやすい、めまい、肩こり、イライラ、抑うつ感、体のだるさ、胃もたれ、頭痛、腰痛、食欲があるのかないのかよく分からない、下腹部痛、不正出血。

  • 脈診:沈細滑やや数脈
  • 舌:やや淡白舌、歯痕あり
  • 腹診:全体的に虚軟

【その他】
10歳の頃より家庭環境の影響もあり2~3年おきに胃潰瘍を発症。

円形脱毛症も過去に2回発症。

花粉症(春のみ)、ストレスによる咳喘息。

 

弁証および治療について

弁証:肝脾不和証、脾不統血証による更年期うつ、および不正出血。

週1回のペースにて鍼灸治療を行っていく。

初回の治療中にお腹がグーグーと鳴り出し、空腹感が出てきて、治療後は気分がスッキリとし、心のモヤモヤ感もかなり改善され、表情も明るくなる。

その他にも首肩の重荷が取れ軽くなり、腰痛もなくなり、一本の鍼で体の状態がとても変化したことに驚きながらも喜んで帰宅。

1週間後に来院されると、周囲で少し嫌なことがあり初回と同じぐらいまで気分が落ち込んでいる。

その他としては肩や腰の痛みは多少あるが、下腹部の痛みはほとんどなし。

2回目以降は鍼だけではなく、お灸も使用し脾胃の弱りからくる不正出血に対しての施術も行っていく。

前回の治療後より気分の落ち込みは全くなくなり、不正出血もピタリと止まる。

以後は食べ過ぎると胃痛が起きることなどもありましたが、その都度鍼灸治療を行うことで改善することができており、母親に対しても「替えることができない電化製品」という考え方をするようになったことでうつ症状は改善していきました。

2週間、3週間と間隔をあけても気分の落ち込みはなかったため、13回で治療を終了。

更年期障害についてはこちら

 

【考察】

若い頃より家庭環境のストレスが原因で色々な不調が出てしまう方でしたが、今回の更年期うつもストレスが引き金となっております。

しかし、この方の場合はストレスももちろん関係しておりましたが、それ以上に脾胃の弱りが色々な症状を引き起こしておりました。

そのため、まずは気の流れを良くすることを目的に百会や後谿を使用し、その後に脾兪や足三里で胃腸を整えることで改善にいたりました。

脾と関係が深い感情は「思慮」、つまり考え込んでしまうこと。

脾が弱いために考え込んでしまいうつと不正出血を発症したということになります。

かなり早い段階で症状に変化が現れましたが、抗うつ剤での治療を行っておらず早い段階で鍼灸治療を始められたこと、治療に前向きであったことなどが関係していると思われます。

また、ミレーナを装着したことでうつ症状が出てきたという方も意外といらっしゃるようなので関係性は否定はできません。

参考サイト:女性ホルモン薬での避妊から、うつ病に?



プロフィール
【国家資格】
はり師、きゅう師、あん摩・マッサージ・指圧師

【鍼灸師になったきっかけ】
小学校から専門学校までバスケットボールをしており、高校時代に某高校のバスケットボール部のトレーナーをしている方の鍼灸院に怪我の治療でお世話になったことがきっかけ。
高校卒業後はスポーツトレーナーを目指し、トライデントスポーツ健康科学専門学校※現名古屋平成看護医療専門学校に通い、卒業後に名古屋鍼灸学校にてはり師、きゅう師、あん摩・マッサージ・指圧師国家資格を取得。
現在は不妊症をはじめとした婦人科疾患や皮膚疾患、精神疾患などの治療に力を入れております。

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